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私はハグ屋さん

お客さんは障害者。そんな専門デリヘルでの経験が豊富な著者が書く、さまざまな男性との出会い

第21回 『初めてのロングコース【前編】』

こんにちは、桂樹碧です。夜に散歩をしていたら、どこからかジャスミンの香りがしてきました。季節はだんだん初夏になっていますね。

『明後日の夜なんだけど、あすかちゃんに12時間ロングコースの指名がきたよ。S県なんだけど大丈夫?』

だいたいプレイの前日までには、店長が電話で連絡をくれました。毎日お仕事があるわけではないので、自宅待機みたいなものでした。

「はい。行けます」

『それじゃ、夕方6時に事務所に来て。お客様指定のホテルまで車で送るから。プレイはSMしたいって言っているから、SMの道具を持って来てね』

実はこの仕事が、私にとって初のロングコースでした。しかも12時間。リピーターでもない新規のお客様で……、12時間も持つのか、12時間プレイしっぱなしなのか、途中で寝ちゃうのか、などといろいろ不安がありました。

そんな気持ちを抱きつつも、SMの基本道具、鞭、麻縄と綿ロープ、ロウソクとブルーシートなどを揃えて、事務所へ。店長の説明を聞きます。

「お客様は脊損。いつもウチ使ってくれている人なんだけど、褥瘡(じょくそう:床ずれの酷い状態)の手術したばかりだって」

この手術は、褥瘡によってできた体の壊死部分を取り去って清潔にするのが目的です。病み上がりでロングコースなのか〜! うぅ、緊張する。高速のインターチェンジを降りて、待ち合わせ場所のラブホへ。

『○○(店名)ですが、今着きました。はい、それじゃお車の方へ行かせますので』

店長がお客様と携帯でやり取りをしました。

「じゃああすかちゃん、ホテルの駐車場に行って。もう駐車場に車止めてあるって」

「分かりました。じゃ、12時間がんばってきます!」

「帰りはO駅まで送るからね。がんばってな!!」

デリヘルバッグと私物のSM道具を入れたバッグを担いで、車を降りました。ホテルの駐車場に入ると、今まさに車椅子を車から降ろそうとしている人がいました。今回のお客様は、自分の足ではまったく歩けません。

なので車から車椅子を降ろすときは、まず運転席のシートを倒し、助手席に畳んで置いてある車椅子を引っ張って運転席側のドアから出します。私は、タターっと駆け寄って、声をかけました。

「○○(店名)のあすかです。○○様ですよね?」

「こんばんは。今車椅子出すからちょっと待ってね」

畳まれた車椅子を降ろし、続いて車椅子用のクッションを取ろうとしているお客様。私は、すぐに座れるようにと車椅子の座面を両手で押して開きました。

「お、車椅子慣れしているね」

「このお仕事で慣れましたから」

本当は、SMの御主人様に教わったことなんですけどね。

「荷物多いのに悪いけど、このリュック持ってくれる?」

助手席から取り出されたリュックを受け取り、お客様も車椅子に乗って準備万端。

「それじゃ、部屋に行きますかね。ちゃんとSMルームあるから」

「うわー! 嬉しいです!」

「一度、SMってやってみたかったんだよ。ホームページのプロフィールを見て、あすかちゃんが入店したときから狙っていたんだ。でも褥瘡やっちゃって入院したからさ」

「入院のことは店長から聞いています。お尻の部分ですか?」

「うん。けっこう酷くて、肉えぐり取られたよ。今もガーゼ当てているし」

部屋を選びながら、そんな話をしていました。部屋へはやはり段差がありましたが、お客様は軽々と前輪を上げて乗り越えられました。インターチェンジの近くで旅行客も泊まることがあるからか、洗濯機と乾燥機、電子レンジがありました。そして肝心のSM道具は……。

ちゃちな拘束椅子が一つあるだけ。

「えー! SMルームってなっていたから、もっとSM道具があるかと思ってたよー!! 三角木馬とか、天井から吊るせるやつとか。本格的なやつ」

「うーん、ちょっと残念ですね。でも鞭や縄は持って来ているので、ひと通りのことはできますよ」

「それじゃ、最初は普通に気持ちよくさせてもらおうかな。あ、店長さんに電話しないとだめじゃないの?」

「そうですね。今から電話します」

こうして12時間のロングプレイが始まりました。

では、続きは次回♪

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