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私はハグ屋さん

お客さんは障害者。そんな専門デリヘルでの経験が豊富な著者が書く、さまざまな男性との出会い

第15回 『父親からの依頼』

こんにちは、桂樹碧です。みなさん、お花見はしましたか? 春はスタートやチャレンジの季節です。

「今日のお客さんは、交通事故で脳をひどくやられちゃった人」

店長、なんかもう少し言い方あるだろ? と思いながら、お客様の説明を聞いていました。

「後遺症で右半身麻痺で言葉も話せない状態。まだ20代前半で、お母さんが旅行とかで家を空けるときに、こっそりお父さんから仕事の依頼が来るんだよね」

お母さんには内緒かー。確かに家に風俗嬢を上げるのは嫌だ!って人多いだろうな……。などとつらつら考えているうちに、お客様の家に到着。下町の大きな団地でした。店長と一緒にお客様の部屋へ。

「こんにちはー。○○(店名)ですー」

「お待ちしていました」

出て来たのは50代の男性。お客様のお父様です。店長とは顔なじみらしく、話している間にブーツを脱いで廊下に上がりました。

「ここが息子の部屋です」

玄関のすぐ横の部屋。玄関は引き戸になっていないし、リビングと廊下の間も普通の扉でした。息子さんの部屋も普通の扉。賃貸物件ゆえに改造ができないのか、しないのか? これじゃ、お客様は自室に閉じ込められているようじゃないか? と思いました。

「失礼します。○○のあすかです」

介護用ベッドが部屋のほとんどを占めているような、四畳半の部屋。扉の横にはPCデスクがあり、お客様は車椅子に座っていました。動く左手で、PCのモニタを指差しています。

PCの画面に『あすかさんへ』というタイトルで文章がつづられていました。

『あすかさんへ 今日したいプレイは69とフェラチオです 洋服を脱いだらバスタオルで体を隠して向かいの浴室に行ってください その間に父にベッドへ移動させてもらって 洋服を脱いでいます 父が声をかけたら戻って来てください 行為が終わった後も同じようにしてください』

ふむふむ。了解。

「わかりました。それでは着替えしますね」

いつもなら、女の色気を出そうとゆっくり脱ぐのですが、今回はあまり時間もかけられなさそうなので、ササッと脱ぎ、デリヘルバッグに入っているバスタオルで体を隠して、部屋を出ました。

私が浴室に入ると『プルルルル』と音が。お客様がナースコールでお父様を呼ぶ音でした。私は寒い浴室にしゃがみこんで、お父様の声がかかるのを待っている状態です。

「準備終わりましたので、よろしくお願いします」

お父様が声をかけてくださったので、リビングへ通じるドアが閉まる音を聞いてから、お客様の部屋に戻りました。お客様は裸になってベッドの上に寝ています。

「ちょっと拭かせていただきますね」

デリヘルバッグから洗浄綿を出して、おチンチンを拭いてからプレイスタート。69の状態になってお互い舐めあい。その後流れでフェラへと移行。特に困ることもなく射精。

お客様の頭のわきにあったティッシュに、精液を吐き出して、またバスタオルを巻いて浴室へ。洗面台でうがいをして、待っていると、お父様の声が。

「お待たせしました」

部屋に戻ると、洋服を着て車椅子に座っているお客様。最初と同じようにPCの前に座っています。というか、PCの前に座るしか部屋の空きスペースが無い状態。左手でキーボードを操作して、私へのメッセージを書いています。

『あすかさん 今日はありがとう もう洋服着てください 風邪ひいちゃいますよ』

「では、お言葉に甘えて」

確かに浴室が寒かったので、早く洋服が着たかったのです。

『俺 バイクで事故して 頭から突っ込んじゃってさ』

「バイクの事故で障害を負う方は多いですね」

PCの画面を見ながら、お客様と話します。

『今さ 通信教育でMOSの勉強してる MOSってわかる?』

「はい。マイクロソフトのビジネスソフトの検定ですよね?」

『そう 難しいんだけど けっこう面白いんだ 将来的には自立して生活したいから まずは仕事を決めないといけないからね そのために資格取りたいんだ』

「すごいですねー!!」

心の底からそう思いました。いきなり重度の障害を負って、障害を受け入れて、前へ進んで行こうとしている姿は、とてもカッコいい!!

『あすかちゃんだって ヘルパー2級持っているじゃない』

「持っていますけど、施設勤務経験とかはないんですよ」

『ペーパードライバーみたいな感じだね』

「あははは。そんな感じですよ。このお仕事が実地訓練って感じですね」

店長からの電話がかかってきて、プレイは終了。

気軽に「がんばって!」なんて言葉はかけられないから

「検定受かるといいですね! 合格、お祈りします!」

と言ってキスをしました。

部屋を出るとお父様が出て来られたので

「今日はありがとうございました!」

とあいさつをして帰りました(料金は最初に店長がいただいていました)。

この仕事では考えさせられることがいっぱいでした。

風俗を嫌う母親がいないときに、息子のことを考えて父親が仕事の依頼をしてくること。

バリアフリーに改造できない住宅。

生きることに前向きな姿勢。

このお客様、今頃はどんなふうに暮らしているんだろう、と時折思います。

それではまた次回♪

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