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私はハグ屋さん

お客さんは障害者。そんな専門デリヘルでの経験が豊富な著者が書く、さまざまな男性との出会い

第26回 『デートコース』

こんにちは。桂樹 碧です。今日は七夕。梅雨の合間に晴れた夜空で、乙姫と彦星が会えるといいですね。

私の勤めていたデリヘルには「デートコース」という、性的サービスは無しで、一緒にご飯を食べたり、買い物しをたり、映画を観たり……というコースがありました。外出介助、のような仕事内容です。

このデートコースは、お客様が女の子と顔合わせをする、という意味合いが強くて、デートコースで女の子のルックスや性格を確かめたら、次からは通常のデリヘルコースの予約をいただくのが、ほとんどでした。でも……。

「明日の仕事はデートコース。お客様はTさんで、場所はお台場です」

「えー! Tさんって私、デートコース4回目ですよね?」

店長から連絡を受けて、思わず私は聞き返しました。Tさんは30代後半で、頸椎損傷で車椅子。自営でお仕事されている方なので、お金にはそんなに困っていないように見えました。そして、デートコースを頻繁に、長時間利用していました。

「ほかの女の子を指名するときもデートコースだけだし、デリヘルコースにしてもプレイできないからじゃないかな?」

頸損で勃起しないため、デリヘルコースだと遊びにくい、というのはあったと思います。性的なプレイができないのに、高い金額をデリヘルコースで支払うよりも、ご飯を食べて、買い物をして、映画を観る、などの普通のデートで、女の子と接したかったのでしょう。

当日は、前回のデートコースでTさんに買ってもらったワンピースを着て、同じく買ってもらった指輪をして出かけました。

「あすかちゃん、ワンピース着て来てくれたんだね!」

待ち合わせの駅でTさんが満面の笑みで迎えてくれました。

「はい。今日の暑さにピッタリです。あ、指輪もしてきましたよ」

左手の薬指にはめた華奢な指輪を、手を差し出して見せます。

「似合っているよ。ワンピースとも合っているし。お昼は食べた?」

「軽く食べて来ちゃいました」

「俺、朝から何も食べていないんだ。どっかで腹ごしらえしたい」

「暑いですし、室内に入った方がいいですね」

頸椎脊髄損傷の人は、麻痺している部分に汗をかきません。ですから、汗による体温調節ができず、熱中症にかかりやすいので、暑いときは水分補給と体温調整が大切になってきます。

車椅子の人とは手をつないで歩けないので、私は肩を軽く押す感じで、隣を歩きます。車椅子の後ろを押すのは味気ないですしね。ただ、力を入れすぎてしまうと、体幹に麻痺のある人の場合、腹筋と背筋が効かないので、前に倒れてしまいます。

ショッピングモールの喫茶店に入りました。暑くて、外のテラス席を使っている人がいないので、冷房の効いた部屋からでもお台場が一望できました。Tさんはサンドイッチとアイスコーヒー、私はアイスティーを頼みました。

「自助具、つけましょうか?」

「お願い。いつものところに入っているから」

Tさんは手にも障害があり、自力でフォークを持つことができません。そのために、フォークが付いている手袋のような自助具が食事のときには必要です。車椅子を漕ぐのに使っているグローブを外して、自助具をつけます。

食事の後は2人でフラフラとウィンドーショッピング。ピアスをプレゼントしてもらいました。毎回何か買ってもらうのには、ちょっと気が引けましたが、彼女と遊びに来ているという雰囲気をつくるのには必要な行為だ、と割り切りました。

駅でお別れのハグとキスをして、お仕事終了。

この後も、Tさんからはデートコースのお仕事が入りました。そして春も近くなった頃、私が店を退店することを店長がメルマガに書いて、最後の駆け込み客が多くなっていたときでした。いつもデートコースだったTさんからデリヘルコースでの予約が入りました。

最後のお仕事ということで気合いを入れて、仕事下着の中でも一番良い物を身につけて行きました。場所は都内の高級ホテルでした。

「あすかちゃん、退店しちゃうって聞いたから、最後にデリヘルコースにしたんだ」

「ありがとうございます。お店は辞めますが、実は独立してお店を持つことにしたんです」

「なんだー! 焦って損したよ! でも今日会わなかったら、独立することも知らないままだったもんね」

「ごめんなさい。流石に独立するとは店長に言えなくて……」

「それじゃ、これからもあすかちゃんと会えるんだね」

「はい。ご贔屓にしてくださった皆様に名刺お渡ししているんです。Tさんもどうぞ」

店のサイトのURLとお店用に買った携帯電話の番号を印刷した、手作りの名刺をお渡ししました。

それからプレイスタート。と言っても、ベッドの上でTさんは私の体を触って、抱きしめ合ってキスしたりしただけでした。

「本当言うと、デリの方は自信がなかったんだよね。俺、勃起もしないし、手も不自由だしさ。でもあすかちゃんの裸見てみたくて。最後にどうしても会いたかったんだ」

「私もTさんと抱き合ってみたかったんですよ。いつも可愛がってくださってありがとうございました」

そう言ってプレイは終わりました。

独立開業したお店の方でも、固定客になってくださいました。デリヘル料金でしたが、食事して、買い物して、ホテルへ、というパターンでした。

Tさんとのお仕事は、疑似恋愛をしているような気分になるプレイでした。お店での最後のプレイで、性的なことに臆病になっていたTさんが、やっと心を開いてくれたようで嬉しかったです。

それではまた次回♪

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