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- 東京都 ちゅっち 25歳
私は自慢じゃないですが、色恋営業を得意としています。
ある日、私についたその人は大学病院の先生でした。お医者さんと聞いて、これはひっぱれるなぁ、としっかり狙いをつけました。
しかもまだ若くて、そこそこイケメン! ちょっとからかい気味ぐらいのノリで誘うと、絶対、数日おかないで、私に会いに来てくれました。
少し照れた顔で
「また会えてうれしい。こんなに早く会いにきてくれるなんて! でもそんな無理しなくていいんだよ」
って笑顔を見せると、さらにハマッテいくんです。その先生は月に5回ペースで来店するようになりました。
私は
「○○さんみたいな人と、いっしょになった人は絶対幸せになれるよね」
とたっぷり甘えて相手の気を惹きまくっていましたので案の定、結婚を迫られることになりました。
「こんなところで会うのはもうこれきりにしたいんだ。お願いします。ボクといっしょになってください!」
彼は、Hしないで口説いてばかり。もううざくてそろそろ切り時だと思いました。
「でも先生が、私みたいなソープ嬢と結婚するなんてもったいないです。経歴にだって傷がつくんじゃないですか」
とやんわりしながらきっぱりと断りました。
それから、1ヶ月、お医者さんは私の前に姿を見せなくなりました。
多分あきらめたんだろうと、忘れかけた頃、彼の予約が入ったのです。私は何事もなかったように
「ひさしぶり! 最近顔を見せてくれないからすごく心配したんですよ」
と白々しいほど明るく話しかけたのですが、彼は思いつめたような顔をして視線を合わせません。
そして息が詰まるような沈黙が5分。彼はやっと口を開きました。
「実は、ボク、医者なんかじゃないんです。本当は看護士。男の看護婦なんです。ウソついてごめんなさい!でも看護士だから経歴に傷がつくなんてことはないし…お願いします。結婚してください」
先生とばかり思っていたら、看護士だったなんて、それじゃ全然お金もないはず。いったいどうやってここに来るお金を作っていたの?
「もう貯金の使い果たして、車も売って、消費者金融でお金も借りてます。それでもキミに会いたかったんだ!」
「ごめんなさい。でも残念だけど、あなたが思ってるようなやさしい女じゃないの!」
「じゃぁ、今ここでボクといっしょに死のう!」
「えぇ!?」
彼はかばんの中から注射器を取り出しました。
「これは筋弛緩剤だ。これを撃てば苦しまずに死ねる。これ以上ボクは苦しみたくない。キミもいっしょに死のう!」
彼の目はマジだったので、私はとっさにインターフォンをとって
「そこのボーイ、すぐ来い!」
と思い切り叫びました。ボーイが階段を駆け上がってきて大事には至りませんでした。
さすがの私も罪なことをしたとこのときばかりは反省しました。
ただ仕事場のスタッフには貞淑な女を演出していたので、そのときの私のキレッぷりにはボーイも腰を抜かしたようで、それ以来、対応が変わったのがわかりました。