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心に残る一作
イグジット・スルー・ザ・ギフトショップ
【監督】バンクシー
落書きアート、グラフィティのカリスマであるバンクシーが初めて手がけたドキュメンタリー映画。アーティストとしての才能の確かさはもちろん、自分の作品を有名美術館に勝手に展示したり、死と隣り合わせの戦場の壁に作品を残したりと、さまざまなパフォーマンスで世の中を騒がせている。そんな彼が、次のアートの対象として選んだのは、普通のおじさんだった……。

幻で金儲けする才能

こんにちはー、甘宮あまみです。高校野球が佳境!ですが、私はテレビを買って以来、朝の楽しみだったNHK『あさイチ』が、高校野球の中継のためにお休みで残念です。なので民放を見たら、どうにか視聴者にお金を使わせよう、というニオイがして辟易。

それが資本主義だからしかたないよ、と言えばそれまでですが、どうにも割り切れなさを感じます。せめてお客さんには、そんな印象を抱かせないようにしなきゃ……。いやむしろ、ドンドン営業して引っかかるお客さんをこなしていくほうが楽なのかも?

なんとも迷いが生じている2011年夏。なんだかもっと迷わせてくれるドキュメンタリー映画を見ました。それが今回紹介する『イグジット・スルー・ザ・ギフトショップ』。街なかの壁などに作品を残すグラフィティアートのカリスマ、バンクシーの初監督映画です。

今のところ、私の中の2011年ベスト映画。見終わったら、芸術って何? 人の評価っていい加減だな〜、これは言い過ぎかもですが、現代のバカさ加減に楽しくなってヘラヘラしちゃいました。

主人公は、アメリカのロサンゼルスで古着屋を営む中年男、ティエリーさん。古着屋はけっこう繁盛していて、彼は妻子とともに幸せに暮らしています。そんないいお父さんであるティエリーには、実は病的な一面が。

彼、常にビデオカメラで目の前の物を撮影してなきゃどうにも落ちつかないんです。毎日、何をするにもどこに行くにも録画ボタン押しっぱなし。そんなある日、久しぶりに訪れた従兄弟の家で、興味深いものをカメラに収めます。

ティエリーの従兄弟は、世界でも有名なグラフィティアーティストだったのです。ティエリーは、従兄弟の活動を撮影したり手伝ったりしているうちに、ほかのグラフィティアーティストにも関わるように。

そして、有名どころはすべてビデオテープに収めたティエリー。残る標的はあとひとり、最大のカリスマであるバンクシーです。しかし、バンクシーはプロフィールを隠し、表に出ることを嫌っているナゾの男……。

さあティエリーは、持ち前の病的な撮影根性で、バンクシーをゲットできるのか!? なんだかストーリーをドンドン書いちゃってますが、映画館で見たいな〜、というみなさんはもう読まないでください。

この映画は、ドキュメンタリーなのですべて実話。商売そっちのけで撮影ばかりしてるのに、経営する古着屋はそれなりににぎわっているティエリーさんには、本当に特別な才能があったのでしょう。

最終的に彼は、古着屋など資産を売り払ってグラフィティアーティストになっちゃいます。でも、ほかと違うのが制作方法。お金に物言わせて若いアーティストを雇い、自分はプロデューサー的立場で指示し、実作業は部下任せなんです。

多くの大物グラフィティアーティストを撮影しまくり、彼らと深く関わってグラフィティに対する目が肥えている彼だからこそ? 本来、ただの病的なビデオマニア兼いいお父さんだった彼が、アーティストとして大成功してしまうのです。

正直、彼のアーティストとしての地位は砂上の楼閣。でも、砂上の楼閣も崩れるまでは多くの人を魅了します。個室で客に微笑む、嬢のように。ああ、なんだかすべての現実が陽炎のように感じる、2011年夏です。

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紹介者のプロフィール

【カモちゃん】

小学生の夏休み、自転車で日本一周を志し東京を出発。その晩は伊豆下田の親切な老人の家に泊めて貰うも、老人の“年齢の割に強い腕力”に屈してヴァージンを捧げる。翌日には泣きながら東京の実家へと舞い戻る。 しかし、幸か不幸か味をしめてカマ道一直線。現在は派遣でボールペンに芯を入れる仕事をしながら、日々同僚の苦学生に熱い視線を送る31歳。前科一犯。


【甘宮あまみ】

漫画家を目指してヘルスで働く女の子。日常の行動範囲はアパートとお店、本屋、画材屋、レンタルビデオ屋と狭く、疲れたときはネットを眺めるのが好きな準ひきこもり。漫画を描いてはいろんな賞に応募したり、出版社に持ち込みに行く積極性はある。お店年齢は21歳。