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心に残る一作
おべんとうの時間
【写真】阿部了 【文】阿部直美
カメラマンとライターの夫婦が、全国各地の手作り弁当を二人三脚で取材。海女、素麺職人、高校生、営業マン、大学教授など、市井の人たちが照れながら見せてくれた弁当をまとめたフォトエッセイ集だ。食べながら語られるのは、仕事のこと、家族のこと、子供の頃のこと……。そこには、お弁当の数だけ絆の物語がある。

幸せを手に入れたい

こんにちはー、甘宮あまみです。地震、びっくりしました。私は外出中だったんですが、電車が止まって帰れない、タクシーは長い行列で、思い切って歩いて帰宅。iPhoneのマップがやっと大活躍してくれました。

その後は、就寝時は非常物資をつめてるリュックとスニーカーを枕元に。ひとまず安心してたんですが、15日の夜にあった静岡の地震を機に、田舎のおばさんの家に避難を決心。すぐにネットで航空券を予約して、朝イチの便で飛び立ちました。

この地震で、いろいろ価値観に変化が……。個人的に、風俗以外のお仕事の雲行きが怪しいんです。将来、何が食いぱっぐれないのかな〜、って考えたりして。ちょっと現実を見るようにもなりました。

さて、飛行機の中で読んだのが機内誌『翼の王国』。この雑誌の取材って、すごくお金かかってると思います。そして、思い出したのが今回紹介する『おべんとうの時間』。これ、『翼の王国』に連載されてるんですよ。

内容は、日本各地の働く人を訪ねて、お弁当を撮影&インタビュー。その人と、お弁当にまつわるエピソードが楽しめます。これを読んでいると、本当にいろんな職業があるな〜、と再認識。そして、パートナーや親や子と一緒に、幸せな暮らしをしている人が多いです。

今回、田舎に避難して再確認しましたが、けっこう低いお給料で暮らしている人が多いんですよね。きっと、『おべんとうの時間』で取材を受けている人の多くも、都会に比べたら少ないお給料のはず。でも、幸せそうな暮らしがあるのは、なんでしょう。人徳でしょうか。

もちろん、取材されるような人は幸せだからこそ選ばれるんでしょうけど、幸せを手に入れていることは間違いないです。幸せを得る過程を、特別意識せずに自然に歩んできた人たちなんだと思います。たとえば、駅員の坂巻さん。彼女は業務時間外にも駅を綺麗にしてるんです。

「私、おっちょこちょいなもんだから、いつでも余裕がないと駄目なのね」「駅の周りの草むしりとか、仕事中だと慌ただしくて出来ないことを、ゆっくりやるのよ」「あんまり除草剤をまいて欲しくないから、ビロード草や松葉菊を、ちょっとずつ増やしてるの。大好きなのよ」

ああ、きっとこういうことをできる人に、幸せってやってくるんだろうな〜、って思いました。こんな駅員のおばさんだったら、もし経営難になってもどうにか雇用を確保してあげたくなります。駅長も上にかけあいたくなりますもん。まあこれらは私の妄想ですけど(笑)。

そして、『おべんとうの時間』の著者の阿部了さんと阿部直美さんは夫婦。この企画って実は、『翼の王国』の連載ありきじゃなくって、夫のカメラマン、阿部了さんのフィールドワークが連載に発展したんです。つまり、最初は収入につながらない企画。

それが注目されて、お金をかけた取材もどんどんやっちゃう雑誌『翼の王国』から声がかかったんです。例であげた駅員の坂巻さんも、著者の阿部夫婦も、お金のためじゃないことをやって幸せを手に入れているんですよね。

もちろん、お金のために働いて幸せを得ている人もたくさんいます。でも、地震でいろいろ、価値観に変化が出て、そんなことに思いを馳せている私です。

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紹介者のプロフィール

【カモちゃん】

小学生の夏休み、自転車で日本一周を志し東京を出発。その晩は伊豆下田の親切な老人の家に泊めて貰うも、老人の“年齢の割に強い腕力”に屈してヴァージンを捧げる。翌日には泣きながら東京の実家へと舞い戻る。 しかし、幸か不幸か味をしめてカマ道一直線。現在は派遣でボールペンに芯を入れる仕事をしながら、日々同僚の苦学生に熱い視線を送る31歳。前科一犯。


【甘宮あまみ】

漫画家を目指してヘルスで働く女の子。日常の行動範囲はアパートとお店、本屋、画材屋、レンタルビデオ屋と狭く、疲れたときはネットを眺めるのが好きな準ひきこもり。漫画を描いてはいろんな賞に応募したり、出版社に持ち込みに行く積極性はある。お店年齢は21歳。