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心に残る一作
女たちよ
【著者】川島秀雄
女性を主人公とした16話の漫画を収録した短編集。表情を失った看護師、巨大な卵を産んだ主婦、堕ちた風俗嬢、無敵な小学生など、さまざまな環境で育ち、暮らしている女性とその内面が描かれている。男性である著者の、女性へのあこがれや尊敬、恐れをこめた一作。ストーリー進行の独特なテンポとあいまって、不思議な読後感を味わえる。

★女たちは、あなたかも

こんにちはー、甘宮あまみです。先日、スゴい女性を見ました。電車の中で、つり革につかまり立っていた彼女。降りる駅に到着したらしく、見ていた携帯を閉じて体を右に向けひとこと。「降りんだよ!」と、右隣に同じく立っていたオジサンに言い放ったんです。

オジサンは何が起きたか理解できないといった表情で思わず後ずさり、彼女はその空いたスペースをテクテクと歩いて降りていきました。オジサンは、出入り口付近に突っ立てたわけでもないのに、なんでそんないきなり恫喝されなきゃならないの……。

あの女性は、ナニサマ……? いくら虫の居所が悪かったとしても、見知らぬ他人によくそんなこと言えるな〜。見た目はうだつの上がらないオジサンでも、逆襲するテクニックを持っているかも、とか考えないんでしょうか。

まあ、多くの人はとっさにそんなテクニックなんて使えないでしょうから、オジサンのように何が起きたか理解できないうちにすべてが終わって、「なんで俺が!」「なんで私が!」と、どこにもぶつけられないくやしい思いで悶々とするんでしょうね。

ここから私が悟ったのは、「ああ、先にやったもん勝ちだな」ということです。でも、オジサンの悔しさも想像できるから、私には、あの女性のような勝ち逃げはできないでしょう。彼女きっと、将来はモンスターペアレントです。

さて、前置きが長くなりましたが、今回紹介の漫画『女たちよ』です。この作品には、多くの女性の暮らしや人生が描かれます。たとえば私たちと同じ風俗嬢、そのほかドラッグ漬けの両親に育てられた女性、小学2年で女性の強さに気づいた女の子などなど……。

個性的なキャラ設定とともに、上達の余地がある(まだあまり上手ではない)絵と、独特なテンポで進むストーリーが絡み合って、読んでいると妙な浮遊感に襲われます。第3者として彼女たちを見ている感覚を、ほかの漫画よりも強く感じられるのかもしれません。

私のオススメは、まずは第1話『シの資格』。これは、表情を失った看護師の話で、彼女が表情を失ったのは、きっと育った環境が原因です。無表情な女性の話らしく、ストーリーは淡々と進みます。でも、最後の最後でドーン! 一気に魂をつかまれました。

もし、本屋さんで立ち読みできたら、第1話だけでも読んでみてください。すると、あとの話も読みたくなって、買ってしまう子が、少なくないと思います。ほかには、よく読んでもなんでそんな終わり方になるの? と正直、分からない話もあります。

それが第4話『ままたまご』。巨大な卵を産んだ主婦の話なんですが、エンディングは理解できないけど、主婦の息子の安心するシーンだけは理解できるし、涙腺が緩む寸前まで持っていかれました。

あと、女性の強さを描いているのが、私たちと同じ風俗嬢を描いた第6話『キズテン』。また、気分が落ちたときの転換に最適、あるいは女性最強説を描いている第12話『オスメスデス』、ちょっといい話の第13話『イエスタデイ先生』もオススメです。

短編集なので暇つぶしにもってこい。また、理解できない話や、女性として爽快な話があるので、繰り返し読んでも楽しいです。読んでて「あ、この子って私じゃん!」なんてみなさんもいるのでは?

自分を、そしてまわりにいるかもしれない女たちを、第3者的視点で味わってみてください。

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紹介者のプロフィール

【カモちゃん】

小学生の夏休み、自転車で日本一周を志し東京を出発。その晩は伊豆下田の親切な老人の家に泊めて貰うも、老人の“年齢の割に強い腕力”に屈してヴァージンを捧げる。翌日には泣きながら東京の実家へと舞い戻る。 しかし、幸か不幸か味をしめてカマ道一直線。現在は派遣でボールペンに芯を入れる仕事をしながら、日々同僚の苦学生に熱い視線を送る31歳。前科一犯。


【甘宮あまみ】

漫画家を目指してヘルスで働く女の子。日常の行動範囲はアパートとお店、本屋、画材屋、レンタルビデオ屋と狭く、疲れたときはネットを眺めるのが好きな準ひきこもり。漫画を描いてはいろんな賞に応募したり、出版社に持ち込みに行く積極性はある。お店年齢は21歳。