心に残る一作
-
夕凪の街 桜の国
- 双葉社
- 2007年に公開された同名映画の原作漫画。昭和30年の広島を舞台とした『夕凪の街』と、現代が舞台の『桜の国』で構成。『夕凪の街』主人公の平野皆実は原爆被害者、彼女の姪の七波は『桜の国』主人公。異なる時代に暮らす2人の女性によって、現代にまで生きる原爆の被害を描く。作者、こうの史代の優しい筆づかいが、重いテーマを最後まで読ませる。
生きてていいに決まってるテーマは原爆、そしてその被害者です。小学校や中学校で何回か、夏に原爆に関する授業ってありませんでした? あと、修学旅行で広島に行ったって人もわりといますよね。そんな原爆に関する情報で私がよく聞いたことあるのは原爆投下直後の状況。 だから、原爆って怖いものなんだ、使っちゃダメなんだ、作っちゃダメなんだ、平和が一番だ、みたいな感想は持ってるんですけど、この『夕凪の街 桜の国』にはもっと深いことを考えさせられます。 『夕凪の街』主人公の平野皆実は原爆の被害者なんだけど、さいわい外傷は軽くて、活気を取り戻した広島でお母さんと一緒に暮らしてるんです。仕事もあって、同僚にも恵まれ、平和に見える彼女の生活なんだけど、原爆被害者の心には消えない傷があった。 原爆投下直後の広島で、何人も何人も苦しんでる人を見るんだけど、自分のことで精一杯で誰も助けられなくて、そんな自分が生きてていいのかな?って。『夕凪の街』では、彼女のことを「好き」って言ってくれる男性が現れて、物語は『桜の国』へ。 『桜の国』では舞台が現代の東京に移り、主人公は皆実の姪の七波に変わります。七波は、男の子に混じって少年野球をやってる活発で明るい女の子。皆実のお母さんも、七波のおばあちゃんとして生きてます。 平和を取り戻した現代の東京で、原爆について描けるの? って思うけど、それが描けちゃうんです。私たちが、昭和20年の問題だと思っていた原爆は、現代でも生き続けてる問題。私個人としては、これを読んで泣けませんでした。 涙が浮かぶ8割ぐらいまでくるんだけど、胸の苦しさのほうが大きくて泣けない。作者、こうの史代さんは広島県出身なんだけど、実は『夕凪の街 桜の国』を描くまでは、原爆に関して避けてきたんだとか。 というのは、こうのさん自らも家族も原爆の直接の被害者じゃなくて、原爆は「よその家の事情」。踏み込んではいけない領域だと思ってたそうです。広島の人でさえこうなんだから、私たちはきっともっと原爆について知らないはず。 少なくとも私はこの作品で、学校やほかの場所じゃ知ることのできなかった、原爆の被害にふれることができました。原爆被害者、珍しい病気、同性愛者、風俗嬢などなど。一緒に並べるなんて不謹慎!? でも少数派の苦しみって、知ってみなきゃ分からないんですよね。別に知らなくても生けていけるんだけど多分、知ってみたほうがいいんじゃないかな〜。きっと人間的に深みが増しますよ! と最後はなんとなくおどけてみました。あはっ。超オススメです! |




