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心に残る一作
イニシエーション・ラブ
乾くるみ/文春文庫
解説:大学生・鈴木夕樹は、人数あわせで参加した合コンで歯科衛生士・成岡マユと出会い、恋に落ちる……。多くの読者が共感できる「初めての恋愛の不安や喜び」を盛り込んだ純愛小説かと思いきや、読み終わるともう一度、ストーリーを確認したくなるミステリー小説。物語の舞台は、1980年代後半の静岡が中心。
こんにちはー、甘宮あまみです。最近、お客さんの入りはいかがですか? 私の店はフリーが若干、少ない気がします……。しかしこの時季のフリー客は、本指名にすれば12月・1月のイベントシーズンにプレゼントくれるかも、なのでがんばりましょう(笑)。

私は、ホントの常連には、忙しい時季を外して来てもらいます。「ボーナスのときとかは店もバタバタして迷惑かけるかもしれないから、お正月が終わったあたりが落ち着いてていいと思いますよ」とか言って、暇な時季の収入源にしちゃう。

フリーと本指と常連を使い分けて、安定収入が得られるよう計画するんです。待機中にボーっと、2ヶ月後くらいを見越して考えます。で、お客さんごとに作ってるカルテにメモっとく。なので私にとって、今時季のフリーは12月・1月の本指要員の候補なんですね。

さて、今回紹介するのは小説『イニシエーション・ラブ』。タイトルにあるイニシエーションとは通過儀礼という意味です。作品中には、「子供から大人になるための儀式。私たちの恋愛なんてそんなもんだよ」って言葉が出てきます。

女の子同士で話してると、よく聞くのが「初めての恋愛の相手に処女をあげたら、なんか目的達成!って感じで別れちゃった(笑)」って話。まあ、こういうのを含めての恋愛を、この作品では「イニシエーション・ラブ」という言葉で表しています。

ストーリーは、恋愛に関してすっごいカタい考えを持っている男の子、鈴木夕樹くんが、けっこうイヤイヤ参加した合コンで女の子のメンバーのひとり、成岡マユちゃんに一目ぼれして……。という展開で始まります。

これ、かなりありがちな始まり方ですが、実は最後にはすっごいドンデン返しが待っています。ホントに最後の最後、物語の後ろから二行目を読んだら、「えっ! 何それ? どーゆーこと??」って、ホントにまた読み返したくなるんですよ!

たしかにね、読んでる途中で「あれー?」って違和感を感じる部分は何箇所かあったんですけど、気にせず読んでくと最後でショックがガーン!! で巻末の【解説】とかを落ち着いて読むと「うわー、そういうことか……」とびっくりするミステリー小説なんです。

物語の舞台は静岡県で、しかも携帯もインターネットもない1980年代後半の話だから、ローカルな固有名詞とか古い用語とか出てきます。あと、少し文章がカタくて、読むのに疲れる……って思う人もいるかもしれません。

でも、ホントに繰り返して読みたくなるくらいびっくりする小説だから、興味を感じた人は読んでみてください。私はこれを読んで、風俗で働くのも、人生の「通過点のひとつでしかないよなー」と思いました。

目的さえ達成できれば、いつでも辞められる。風俗で働いてた過去は、自分の中にだけしまっておけば無いも一緒。まわりにバレなきゃいいんです。私にはそれができる、と思いました。

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紹介者のプロフィール

【カモちゃん】

小学生の夏休み、自転車で日本一周を志し東京を出発。その晩は伊豆下田の親切な老人の家に泊めて貰うも、老人の“年齢の割に強い腕力”に屈してヴァージンを捧げる。翌日には泣きながら東京の実家へと舞い戻る。 しかし、幸か不幸か味をしめてカマ道一直線。現在は派遣でボールペンに芯を入れる仕事をしながら、日々同僚の苦学生に熱い視線を送る31歳。前科一犯。


【甘宮あまみ】

漫画家を目指してヘルスで働く女の子。日常の行動範囲はアパートとお店、本屋、画材屋、レンタルビデオ屋と狭く、疲れたときはネットを眺めるのが好きな準ひきこもり。漫画を描いてはいろんな賞に応募したり、出版社に持ち込みに行く積極性はある。お店年齢は21歳。