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心に残る一作
ショートソング
枡野浩一/集英社文庫
解説:しゃべり言葉で親しみやすい短歌を詠む歌人、枡野浩一の初長編小説。主人公は、日本とカナダのハーフでイケメンの大学生、克夫。ハタチを前にして童貞の彼は、憧れの先輩、舞子に誘われて短歌の会に参加するのだが……。いまやオシャレな街のひとつとして数えられる吉祥寺を舞台に、克夫の恋と短歌の日々が幕を開ける。
こんにちはー、甘宮あまみです。らぶぼにーたの携帯サイトで川柳コーナーが始まったこともあり、今回は川柳とつながりのある短歌を扱った小説『ショートソング』を紹介します。

著者は短歌のほか、エッセイや漫画評論など幅広く活躍中の歌人、枡野浩一さん。私が枡野さんを知ったのはこの本が初めてで、本を取ったきっかけは、表紙のイラストでした。

これ、人気バンド「アジアン・カンフー・ジェネレーション」のジャケットを手がける中村佑介さんのイラストなんです。本屋で、「あ、中村さんの絵!」とテンションあがって手に取ったら、それは短歌の人が書いた小説。「なんか面白そう」ということで買ったわけです。

ストーリーは、内気な性格のせいで20歳を目の前にして童貞のイケメン、国友克夫くんの成長物語。天才歌人の伊賀寛介と出会った彼は、短歌に面白みを見つけます。はたして克夫は、20歳までに童貞脱出なるか? 克夫くん、かなり天然な男の子で笑えます。

そして伊賀は、モテモテで性格が少しひねくれてるキャラ。平気で浮気したりして、読んでてムカついたりもしましたが、実は深い考えの持ち主なんです。私、作品紹介であまり文章の引用をしないんですが、伊賀のセリフでいいのがあったので以下に挙げます。

「けなし言葉とほめ言葉は、同じ重さじゃないと思うんだよ。人は生まれてから常に死に向かっているから、ほっておくとネガティブなほうへ傾く、だから絶賛のほうをたくさん浴びるくらいでないとだめなんだ。批判をするなら、より高いレベルの絶賛がいつか生まれるように、作者本人に届くような言葉をつかわないとだめだ」

どうですか? 私はこういう考え方、好きです。人って結局、判断基準は自分の価値観なわけで、何かを評価するときに必ず好き嫌いは出ます。だから生きてると、他人から低い評価や批判を受けることがあるのは当然だし、理解できるけど、やっぱ受けると落ち込む。

でも批判の背景に、伊賀みたいな考えがあると、あると思うと、ちょっとポジティブになれます。まあ、そんな妙に悟った考え方の人ばかりの世の中じゃ、「コワイ……」って思う私もいますけど(笑)。

やっぱ「とりあえず批判!」みたいなキャラもいたほうが、自分が傍観者の立場だと面白いかな。あと、この作品の舞台の中心は東京の吉祥寺です。私も以前、同じ市内に住んでたので懐かしくなりました。

で思い出したんだけど、花村萬月さんって作家の小説で『吉祥寺幸荘物語』ってのがあって、それは20代の童貞のお話なんですよね。この作品には、歌舞伎町にあるマスコミNGの高級店がモデルっぽいソープが出てきます。興味のある方はチェックチェック!

吉祥寺っていい街だけど、いまひとつヤボったい部分もある。そんなだから、気難しかったり可愛かったりする、童貞を活躍させたくなる街なのかもしれません。というのは私基準の吉祥寺評。

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紹介者のプロフィール

【カモちゃん】

小学生の夏休み、自転車で日本一周を志し東京を出発。その晩は伊豆下田の親切な老人の家に泊めて貰うも、老人の“年齢の割に強い腕力”に屈してヴァージンを捧げる。翌日には泣きながら東京の実家へと舞い戻る。 しかし、幸か不幸か味をしめてカマ道一直線。現在は派遣でボールペンに芯を入れる仕事をしながら、日々同僚の苦学生に熱い視線を送る31歳。前科一犯。


【甘宮あまみ】

漫画家を目指してヘルスで働く女の子。日常の行動範囲はアパートとお店、本屋、画材屋、レンタルビデオ屋と狭く、疲れたときはネットを眺めるのが好きな準ひきこもり。漫画を描いてはいろんな賞に応募したり、出版社に持ち込みに行く積極性はある。お店年齢は21歳。