会員登録 初めての方はコチラ
ログイン メンバーの方はコチラ

※すでに会員の方、携帯電話からすでにメンバー登録をすませている方はコチラ

心に残る一作
  センセイの鞄
川上弘美著 / 2004年 文藝春秋
解説:およそ恋愛とは結びつかないはずの2人―― 38歳のツキコさんと70代のセンセイは、近所の駅前の一杯飲み屋で居合わせて以来の仲だ。お互い1人で酒を飲み、さかなの好みがよく似ている。 「『女のくせに手酌ですかキミは』センセイが叱る。『古いですねセンセイは』と口答えすると、『古くて結構毛だらけ』とつぶやきながらセンセイも自分の茶碗いっぱいに酒を注いだ」憎まれ口をたたき合いながら、2人は共に過ごすようになる。 「センセイ」とわたしが、過ごした、あわあわと、そして色濃く流れゆく日々。川上弘美、待望の最新長篇恋愛小説。
川上弘美。この字面からして地味な印象を受ける人も多いと思うんだけど、やっぱ地味な作品を書くのよねー。いや、悪口じゃないわよ。カーチェイスが無く、死人は蘇らず、ビルは爆発せず、レインボーブリッジは封鎖されず、そんな内容でも面白い小説はたくさんあるものね!ていうか、上の条件を満たす小説なんて、無い。

この「センセイの鞄」は“川上弘美の最高傑作”と称されて、書店でも結構プッシュされてて、小泉今日子と柄本明主演でドラマ化なんかもしてるのよね。確かに良い小説なのよ。主人公のツキコさんは、通いつけの居酒屋で偶然高校時代の国語教師と再会。それから二人は幾度と無く酒を酌み交わす仲になり、やがて休日も行動するようになっていく。ツキコさんは中年に差し掛かる頃合いの年齢なんだけど、歳の近い男から誘いにもピンとこなくて、身を委ねる事ができない。

そんな中、最早老人とも言える年齢の“センセイ”と一緒にいる事で、なんとも言えない安らぎを覚え、徐々に異性としてのセンセイに惹かれていく。親子ほどの歳の差もあり。ツキコさんは自分の中に芽生えた感情を否定しようとするけれど、その頃にはツキコさんにとってセンセイは無くてはならない存在になっていたので、ツキコさんは胸の内をセンセイに告白する……。

と言った内容の作品なんだけど、設定が渋いわよねー。70がらみの老人と、38歳の女性とのラブストーリー。スキャンダラスな事もなく、ただ淡々と、ほのかに芽生え、やがて育っていくツキコさんの恋情が、川上弘美の端整な筆致で描かれていく。うーん。こりゃ、休みの日なんかに腰を据えて一気に読みたい作品ね。

けど、けどけどけど、正直言ってカモちゃんには退屈だったわね。ほら、カモちゃんももう、三十路を越えたとは言え、24アワー・パーティ・ピープルですから。毎日毎晩乱痴気騒ぎ。酒ビンを股に挟んで「チンコ!」とか言ってるようなオカマですから。ちょっとこの作品はね、静かすぎるのよ。

確かに文句のつけようのない作品。非常に美しくて、読むと胸の辺りがじんわり温かくなって、ラストでは締め付けられるような切なさが胸を襲う。良い作品なのよ。けどね、カモちゃんがこの作品を本当の意味で味わえるのは、まだまだ先の話。ツキコさんとセンセイの間に流れる、豊かな時間は、心に余裕がある人間にしか響かないと思うのよね。

この小説は、10年後にもう一度読みたい。その時は、きっともう少し分かると思う。 人は誰でも老いる。今、カモちゃんが感じる豊かさは、ウマいもん食って、良い酒飲んで、喉が裂けんばかりに騒ぐ事。でも、きっと、10年後のカモちゃんが感じる豊かさは、絶対違う。それをこの小説は教えてくれたのよ。10になっても、50になっても、70になっても、人生は続く。老いても尚、人生には豊かさがある。それをこの小説は指し示してくれてるのよ。あらやだ。今日のカモちゃん、ちょっっぴり“川上弘美モード”。妙によそ行きの文章になっちゃったわ。っつう事で、若いカモちゃんは、今からズブロッカ飲みに行ってきまーす!チャオチャオ。

■ この記事の感想を下のボタンを押して送ってください。
    (31)
    (22)
    (42)
■ とりあげてもらいたい作品がありましたらこちらから送って下さい
(作品名を入力して下さい) (ニックネームを入力して下さい) (メールアドレスを入力して下さい)
※採用された方にはもれなくプレゼントを進呈致します!!

紹介者のプロフィール

【カモちゃん】

小学生の夏休み、自転車で日本一周を志し東京を出発。その晩は伊豆下田の親切な老人の家に泊めて貰うも、老人の“年齢の割に強い腕力”に屈してヴァージンを捧げる。翌日には泣きながら東京の実家へと舞い戻る。 しかし、幸か不幸か味をしめてカマ道一直線。現在は派遣でボールペンに芯を入れる仕事をしながら、日々同僚の苦学生に熱い視線を送る31歳。前科一犯。


【甘宮あまみ】

漫画家を目指してヘルスで働く女の子。日常の行動範囲はアパートとお店、本屋、画材屋、レンタルビデオ屋と狭く、疲れたときはネットを眺めるのが好きな準ひきこもり。漫画を描いてはいろんな賞に応募したり、出版社に持ち込みに行く積極性はある。お店年齢は21歳。