会員登録 初めての方はコチラ
ログイン メンバーの方はコチラ

※すでに会員の方、携帯電話からすでにメンバー登録をすませている方はコチラ

心に残る一作
  声をなくして
永沢光雄著 2005
解説:『AV女優』などの話題作でインタビューの名手として知られる永沢光雄が43歳の或る日、下咽頭ガンの手術で声を失ってしまい、その闘病生活を1年にわたり赤裸々に日記に綴った。朝起きる。ひどい首の痛み。そして、呼吸困難。鼻につながる気管も切除され、呼吸は左右の鎖骨の間に空いた穴から行う。全身にどんよりとした疲れ。まず最初の日課は焼酎の水割りで大量の薬をのどに流し込むことだ。そんな日々でありながら、筆者の筆致はユーモアに満ち、声を失った自分を時にはおかしく、時には哀しく描いている。何があっても生きる。だから、みんなも、毎日がつらくても生きて欲しい。他者への暖かいまなざしを持ち続ける筆者のそんなメッセージが行間にあふれてい る。
 みなさん、おっはー!カモちゃんですよ〜ん。

芸術の秋!ぶっちゃけカモちゃんは「○○の秋」って言葉、嫌いなんだけど、涼しくなってくると本を手に取る気も起きるわよねー。暑い時は、本とか読む気になんないもん。ビッチリ並んだ文字すら、暑い。

そんな訳で最近の読書ライフで「おお!」と思わせてくれたのは、この「声をなくして」。みんなは永沢光雄って人を知っているかしら?「AV女優」「風俗の人たち」などの、性産業に従事する人々を取材させたら天下一品。風俗ライター界では無く子も黙る重鎮なのよ。

永沢さんは、住まいが新宿二丁目で、昔はよく見かけたのよねえ。お話をした事は無かったけど、凄い印象に残ってるのよねー。ハゲてるし。それよりも何よりもハゲよりも、二丁目のゲイたちに愛されてる感じがしたのよ。ノンケの永沢さんだけど、あの街に受け入れられてる感じが、凄くしたな。うん。

そんな永沢さんの最新刊が「声をなくして」なんだけど、この本は文字通り“声をなくした”永沢さんの日々を綴った日記なのよね。永沢さんは、ガンを患って、声帯を摘出。その結果、命と引き換えに声を失ってしまったの。

インタビューという仕事をメインにする者にとって、声が出なくなるというのは、なかなかに問題がある。まさかパネルに質問を書いて、相手に答えていってもらう訳にもいかないだろうし、まあ、インタビュアーの仕事は廃業せざるをえないわよね。そういう訳で、永沢さんの仕事は激減し、永沢さんは生活の破綻を恐れて暮らす日々。 端から見ると、堕ちていく人生に見えるのかもしれないわ。

けどね、それって違うのよ。永沢さんは仕事が減って困ってるどころか、「どうせ(仕事が来ても)体調悪くてできないし」ぐらいの開き直りをもって、大量の処方薬を焼酎でお腹の中に流し込む日々。完全なアル中。喉に穴あいてるし。

そう。この本はダメな“アル中40代ハゲライター”が、喉の穴からうーうー言いながらゴロゴロしているのを書き記した日記。言ってみれば、ただそれだけなのよ!けどね、愛される人の元には魅力的な人達が集まる。声が出ない事を知って、日記を書くように依頼した編集者。「そっちはガンで暇かもしれませんけどね、こっちは仕事中なんですよ!」とストレートに言い放つ悪友。そして、どうしようもない彼に寄り添い、励まし、叱り、愛する、唯一無二の妻。そんな幸福な仲間に愛されて永沢さんは生かされていくのよ。

確かに声が出せなくなる事は、辛い。死んでしまおうと考える人がいても無理は無い。世の中にはその他にも永沢さんと同等、いや、それ以上の不幸を抱えて、自ら命を絶ってしまう人がたくさんいる。

そんな人達に向かって、永沢さんは本の最後で力強く叫ぶの。

「私は、言う。ちゃんと言う!みんな、死ぬな!」

それは、友人を亡くし、かつてインタビューして人を亡くし、最愛の近鉄バッファローズを亡くし、黙っていても亡くなり続けていく人や事に対して、親愛の情を込めて、望まないのにも関わらず連れていかれていってしまった彼らへの深い愛情。そして、運命に抗って生き続けようとする永沢さんの意志が、この言葉に表れているのよね。

とにかく辛い辛い闘病記という訳ではなく、時にユーモラスでさえある永沢さんの日常を記録したこの日記は、読み終えた後に清涼感があって、元気をもらえるのよねー。喉に穴があいてる人でも全然生きれてるじゃん。と思うと、少し明日に希望が持てる。さあ、絶望を覚えている方、聞いて下さい。カモちゃんは、言う。ちゃんと言うわよ。

みんな、死んじゃダメダメ!

■ この記事の感想を下のボタンを押して送ってください。
    (37)
    (24)
    (27)
■ とりあげてもらいたい作品がありましたらこちらから送って下さい
(作品名を入力して下さい) (ニックネームを入力して下さい) (メールアドレスを入力して下さい)
※採用された方にはもれなくプレゼントを進呈致します!!

紹介者のプロフィール

【カモちゃん】

小学生の夏休み、自転車で日本一周を志し東京を出発。その晩は伊豆下田の親切な老人の家に泊めて貰うも、老人の“年齢の割に強い腕力”に屈してヴァージンを捧げる。翌日には泣きながら東京の実家へと舞い戻る。 しかし、幸か不幸か味をしめてカマ道一直線。現在は派遣でボールペンに芯を入れる仕事をしながら、日々同僚の苦学生に熱い視線を送る31歳。前科一犯。


【甘宮あまみ】

漫画家を目指してヘルスで働く女の子。日常の行動範囲はアパートとお店、本屋、画材屋、レンタルビデオ屋と狭く、疲れたときはネットを眺めるのが好きな準ひきこもり。漫画を描いてはいろんな賞に応募したり、出版社に持ち込みに行く積極性はある。お店年齢は21歳。