心に残る一作
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腑抜けども、悲しみの愛を見せろ
- 本谷有希子著/講談社
- 「お姉ちゃんは最高におもしろいよ」と叫んで14歳の妹がしでかした恐怖の事件。妹を信じてはいけないし許してもいけない。人の心は死にたくなるほど切なくて、殺したくなるほど憎憎しい。三島由紀夫賞最終候補作品として議論沸騰、魂を震撼させたあの伝説の小説がついに刊行。
醜いオカマの恨み節……という訳じゃなく、本当に駄作なんだってば!
- アン、ドゥ、トロワ!アン、ドゥ、トロワ!ぼんじゅ〜る!かつてはミュージカルスターに憧れていたカモちゃんざます。ジュテーム。ムッシュかまやつ。そんなカモちゃんなんざますけど、夏が来ると思い出す事があるんざますよ〜。
- あれは数年前、定職にも就かずプラプラしたおしてるにも関わらず、まだ舞台の夢を捨てきれずにいたあの頃。カモちゃんはたまたま観に行った舞台の折込みチラシで、とある劇団のオーディション開催の告知を発見したのよ。それまで演技経験なんて全く無かったカモちゃんだったんだけど、ミュージカルスターへ の第一歩として、勇気を出してそのオーディションを受けに行く事を決めたのよ。
- まず、寝坊したわよね。オーディション開始の時間に起きたわよね。それって、イケてないわよね。慌ててオーディション会場に電話すると、来ても大丈夫だ という事だったので、朝シャンもシェービングもせず、オーディション会場へ。
- 最寄りの駅に着いたら着いたで、会場の場所が分からない!とりあえずタクシーに乗り込みさえすれば何とかなる、という田舎者的発想で近くのイエローキャブに乗り込むと、運転手は開口一番「うーん……こ、れ、は、どこなんです かねえ?」。大失敗!仕方が無いので、運転手と迷いながら会場を目指すと、随分とまあ、へんぴな場所に会場を発見。表でタバコを一本吸って、オーディション会場へ滑り込み、何とかオーディションを受けられる事になりました。
- 「カモちゃんさんは、演技の経験は?」
- 「ありません」
- 「うちの劇団の芝居を観た事は?」
- 「ありません」
- 「志望の動機は?」
- 「実は先日、私のロンドンにいる友人が白血病で亡くなりまして、すごくひたむきで、前に向かって生きる気持ちの強い子でした。そんな彼女でも、何の罪も 無い彼女でも、死んでしまうんです。それに気付いたので、やりたいと思った事はすぐやる事にしたんです。死んでから、後悔は残したくないから……。そしてまた、周囲の人間に悔いを残して死んだと思われたくは無いから……」
- そんな具合に適当な面接を経て、実技試験。カモちゃんの演技はねえ、なんというか、痛かった。“やってはいけない事をやってしまってる感”が物凄く強かったわ。役者さんが簡単そうにやってみせる演技も、実は中々難しいのよね。オーディションは、当然落ちました。ダメ。カモちゃんは。才能。無い。
- この「腑抜けども、悲しみの愛を見せろ」の主人公・澄伽も、そういう女(導入長っ!)。演技は底冷えするほどに下手なんだけど、「自分は特別な存在」と いう自意識がそれを気付かせない。
- 。「自分は女優になるために生まれて来た」という強烈な観念から、彼女の行動は傍目から見ると常軌を逸しているようにし か見えない。
- そんな彼女を中心とした、田舎の小さな村の、ちっぽけな家族の物語。これがこの小説の構造なの。
- まあ、ぶっちゃけ、その、なんだ、カモちゃん的にはあんまり面白く無かったのよ。
- 下北沢の雑貨なんかを一緒に売ってるオモロ本屋で尋常じゃないプッシュをされていたから手に取ったんだけど、楽しめなかったわー。
- 技術的な部分を語れば、情景描写がクドくて、更には擬人法が多すぎて読みづらく、してまた、 文章の中に笑かそうとする箇所が散りばめられていて、その思惑とは裏腹に、文章のうっとうしさからカモちゃんのテンションはズズイと下降。ストーリー的 には、中心に“自意識が強くトラブルを巻き起こす女”を据えたのは偉いような気がするけど、全体的には陳腐。
- 特に目新しい物は無く、昨今流行りの“女流作家が書く、悲惨で痛々しくて生々しい物語”の系譜の一つに過ぎないのよねー。
- ほら、「蛇に何ちゃら」とかいう小説を書いた、しょーもない芥川賞受賞作 家みたいなものよ。
- ああいう感じ。カモちゃん的に、そういう痛い話は、ノーセンキューな気分なので受け付けないって理由もあるんだけど、決してオススメ はできないわー。
- あ、ちなみに、この本谷有希子って人は、私がオーディションを受けた劇団の主宰者でもあるのよね。若くて、ルックスは結構いい線いってる女の子。
- けど、 きっと性格悪いわよ!多分!おそらく!いや、オーディションで落とされたからって辛辣な意見を言ったり、悪口言ったりしてる訳じゃないんだからね、マジで!



