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哄う合戦屋
- 【著者】北沢秋
- 舞台は戦国時代、強国の狭間で中小の武士が争いを繰り広げる長野県。山深い名もなき城に、天才軍師・石堂一徹が流れ着いた。一徹に担がれた領主の遠藤吉弘は、急速に勢力を広げるが、吉弘が一徹の心の奥底に潜むものに気がついたとき、歯車が狂いだす……。「もはや拙者には、富貴も名誉も要らぬ。願うはただ、殿を天下人にすることのみでござる」。
地元のヒーローに頼ろう
こんにちはー、甘宮あまみです。少し前、興味深いニュースを見ました。お祭の山車(だし)を猛スピードで操作して街中を駆け巡る関西の「だんじり祭」。あれってよく、地域の人たちはみんな「だんじり」に命をかける、みたいにテレビ番組になったりするじゃないですか。
でもそのニュース、だんじりの練習をさぼった高校生が、同じ地域の21歳に「なんでさぼったんだ!」と拉致られて重傷を負わされたという内容なのですが、これを知って私は少し安心しました(被害者は本当にかわいそうですが)。
なぜかというと、「だんじりをめんどくさく感じる子もいるのね」と分かったからです。以前から、いくら地域の伝統だからと言って、本当にみんながみんな夢中だったら恐いな、と感じてたんです。さぼる子がいるくらいのほうが、人間社会として健全よね、みたいな。
そもそも、さぼったくらいで暴力をふるう大人がいるから、さぼりたくもなるんではなかろーか、としばし見知らぬ関西の地に思いを馳せる私。ちょっと現代のあまちゃん的考えでしょうか(笑)。
今回紹介する一作は小説『哄う合戦屋』。描かれるのは、戦国時代中期の長野県。日本全国それぞれの地域で、一番強い武士がだいたい決まってきて、その中から誰が日本で一番強いのか? いっちょ決めよーや、となる少し前の時代です。
主人公は流れ者の武士、石堂一徹(いしどういってつ)。過去にさまざまな戦争で結果を残し、長野県では伝説の武士として恐れられています。そんな彼が、ふらっと訪れた地域で領主の部下となり、戦争で大活躍! 目指すは天下統一! という物語。
話の中では石堂一徹、兵を指揮して戦争を勝利に導く才能はもちろん、個人としても強いは、頭はいいは芸術的才能もあるはで、めちゃくちゃすごいんです。読んでいて、こりゃ本当に天下統一しちゃうんじゃないの? というくらい。
でも、それは絶対に無い……。だって、歴史的事実からいって、長野県は山梨県の武士、武田信玄に攻められ、奪われてしまうのですから! つまり、最後には石堂一徹は負けざるを得ないのです。
私は読んでいて、作者がこの強い男をどう負けさせて物語を決着させるのか、先を急がずにはいられません。実は『哄う合戦屋』には、石堂一徹の過去を描く『奔る合戦屋』と、武田信玄との戦争に突入する『翔る合戦屋』という続きがあって、私は今、『翔る合戦屋』を読書中。
本当に、この話どう終わるんだろう? とドキドキが止まりません。繰り返しになりますが、歴史的事実からいって長野県は武田信玄のものになるので、物語の中では最強感たっぷりの石堂一徹は負けなきゃいけないんです。
で、読んでて思い当たったのが冒頭のだんじりのニュース。石堂一徹は地元のスーパーヒーローで、たとえ最後は負けても、彼をしたう人たちの中では、最高の人物として生き続けるはずです。
でも、ニュースの高校生の街には地元のヒーローが不足してるのでは、と思ったんですよ。祭には参加するもの、俺たちはだんじりを愛するものという形式だけに支配されて、地元を率いるヒーローが少なくなっているから、あんな事件が起きてしまったのではないかと。
なんて力説しつつ、私はそんなめんどくさい役は引き受けたくないと思っているわけですが、私のまわりのヒーローと言えばお店のお姉さん。質問すれば経験に裏打ちされた答をくれる、そんな地元のヒーローを、もっと頼りにすると稼ぎも伸びるのでは!
という提案で今回は締めたいと思います。まあお姉さんも人によりますけど(笑)。戦国がいけるみなさんは『哄う合戦屋』シリーズ、読んでみてください!
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紹介者のプロフィール
【カモちゃん】
小学生の夏休み、自転車で日本一周を志し東京を出発。その晩は伊豆下田の親切な老人の家に泊めて貰うも、老人の“年齢の割に強い腕力”に屈してヴァージンを捧げる。翌日には泣きながら東京の実家へと舞い戻る。 しかし、幸か不幸か味をしめてカマ道一直線。現在は派遣でボールペンに芯を入れる仕事をしながら、日々同僚の苦学生に熱い視線を送る31歳。前科一犯。
【甘宮あまみ】
漫画家を目指してヘルスで働く女の子。日常の行動範囲はアパートとお店、本屋、画材屋、レンタルビデオ屋と狭く、疲れたときはネットを眺めるのが好きな準ひきこもり。漫画を描いてはいろんな賞に応募したり、出版社に持ち込みに行く積極性はある。お店年齢は21歳。


