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心に残る一作
ご近所の許せない女 vol.4
笠倉出版社刊/作家:小野拓実 他
笠倉出版社から隔月で発行されている嫌われ者女描いた作品集。ページがベッタリ指に張り付きそうな湿度120%読みきりレディコミだ。ご近所コミックの天才、小野拓実を看板に質の高い作品が並ぶ。乱立状態の読みきりレディコミの中でも、ストーリー、問題提起の新鮮さでは、頭ひとつ抜けている印象がある。
1位 もりゆきこ「嘘の重なり」
 すべてはゴミだしの時間に遅れてしまったことがいけなかったのだ。次の回収日までに生ゴミが腐ることをおそれた主人公の若妻は、山奥に生ゴミを不法投棄。その帰り道、偶然拾った財布が若妻の人生を狂わせた。
猫糞した主人公は景気よく財布の中身を全部使ってしまうが、財布の落とし主はご近所の性悪ババァがということが判明。あやしむババァを何気ないウソで切り抜ける若妻だが、最初についた小さなウソがどんどん大きくなっていき、追い詰められていく。
きわどく切る抜けられるかと思いきや、ゴミだし見張り役のご近所マダムが、若妻の猫糞を目撃していて、さぁたいへン。マダムはすでにババァにチクッていた。
ささいな日常でこういう展開ってあるけど、物語の組み立て、結末がクレージーで楽しめる。確信犯で書いてるのか!と突っ込みたくなるカルトな作品。
 こういう漫画大っ好き! 無駄な仰々しさ、ナンセンスな展開、ベルサイユ系譜の流行らない絵柄、楳図かずおテイストのモノローグ。全てが絶妙に調和して、脱力系の「膝カックン具合」が群を抜いてるわよねー。
狙って描いてたら天才じゃないかし ら?ていうか、この漫画って、誰が「許せない女」なのか全然分からない! 出てくる人物全てに好感が持てない所が気に入ってまーす。
年金をスラれたばあさんも、主人公の女に付きまとう近所のマダムも、ちょっぴり頭が足りない主人公の女も、全員許せないっちゃ、許せないのよねー。
いやー、でも、このもりゆきこって人は下手すれば大化けするんじゃない?「おしゃれ手帳」の長尾謙一郎に通じるものがある…ってそれは言いすぎね(笑)。
2位 団藤アイジ「貴男の手が好き」
 今やトレンドとなりつつある幼児虐待、この作品もそんなテーマを描いたのかと思いきやちがっていた。萌え系巨乳ヒロイン亜衣の夫・貴弥には幼児虐待の暗い過去が……貴弥とその妹は、実の母親から、度重なる虐待を受け、体にはタバコのやけど後が今でも残る。
くわえられる過酷な仕打ちに耐えてきた兄と妹だが、洗面器に顔を押しつけられ、窒息寸前の妹を見て、ついに兄は包丁で母を殺害する。しかし救ったはずの妹には、兄を母親殺しの犯罪者扱いされ、親族からも疎まれる貴弥。
そんな一人ぼっちの貴弥に献身的に尽くすヒロインは健気で、男の理想の女性といっていいだろう。ただ不思議なことに亜衣は、貴弥の手に異常な執着を示す。いったいなぜなのか……ラストの一こまになって初めて明らかにされる衝撃的な亜衣の独白を聞け。
 この話は、昼の連続ドラマみたいに普通の良い話になりそうな所で大どんでん返しになるのが、たまらなく痛快なの! 王道っちゃあ王道なんだけど、この主人公の女みたいな考えを持つ人がいてもおかしくないのかなー、って思うわー。
むしろオカマ的にはコモンセンス! 常識!って感じの業の深さよねー。なので、私はこの主人公の女は全然「許せない」って事はないんだけど、こういう女に付き纏われたら苦しいんでしょうねー。オカマに付き纏われるのが鬱陶しいのと一緒一緒。
でも、それと同時に男冥利に尽きるわよ。絶対に!あーあ、私もこんな風に付き纏ってみたいわー。ちなみにタイトルの「貴男」なんだけど、「あなた」で変換しても出てきませーん。実は「たかお」って読むんだったりして…(笑)。
3位 牧村しのぶ「気のきく女」
 中堅OLの深雪は、年下で甘え癖のある誠と付き合って1年になる。セックスの相性も合うし、お互いの境遇に理解も示すラブラブカップル、に見えた。
しかし深雪の後輩、西田明穂と誠を引き合わせたことで、順調な交際に暗雲が立ち込める。家庭の面倒を見なければいけない上、仕事に忙殺される深雪。精神的に幼い誠ははそんな深雪に苛立ちを感じていたのだ。そこに気が利いてお嬢様風の明穂がつけ込む。
出合ったばかりの誠に巧妙にアプローチし、電撃的に肉体関係を持ってしまう。表面上は気の 利く明穂に誠は首ったけ状態。誠は深雪を捨て、明穂と結婚を決意するのだが。
 嫌! もうこの一字に尽きるわねー。今回セレクトした作品の中で一番嫌な女よー。こういう上辺だけ気をきか せる女って大っ嫌いなのよねー! いっつも愛想良くニコニコして皆に好かれるんだけど、いざ付き合うとガラリと変貌する。
釣った魚には餌をやらない、みたいな。オカマの世界にもいるいる、こんなオカマ。ああ、嫌だわ。男の方も最悪ね。目先の優しさにふらふら付いてって、いざ現実に戻って元の女に戻ろうとする。こんなオカマみたいな男って大っ嫌い!…って、私が言ってること矛盾に満ちてるわね(笑)。
でも、こんな男女関係は、やっぱり最高に嫌い。私みたく清潔な男男交際をするオカマにしてみれば特にね!
総評
 ぶっちゃけた話、一番「許せない」と思うのは「子供自慢」(小野拓実)に出てくる自分の子供の可愛さを吹聴する女だと思うの。でも、ストレートにそれを選ぶのも何だかな、と思ったからちょっと捻ったセレクトにしてみましたー。
この雑誌を通 して読んで思ったのは「色んな奴がいるわねー」というごく当たり前の感想。楽しみ方としては、自分のプライベートな経験を漫画の登場人物に置き換えてもいいし、「こんなオカマにはなるまい」と自分を戒めるも良し。色々な楽しみ方ができるのよー。
最初は「はん! こんな家で古内東子を聴いてるようなOLが読む雑誌、興味ないわ!」って思ってたんだけど、実は結構ハマっちゃって、次の号をワクワクしながら待ってるのよねー。うっへー、オカマって単純(笑)。
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紹介者のプロフィール

【カモちゃん】

小学生の夏休み、自転車で日本一周を志し東京を出発。その晩は伊豆下田の親切な老人の家に泊めて貰うも、老人の“年齢の割に強い腕力”に屈してヴァージンを捧げる。翌日には泣きながら東京の実家へと舞い戻る。 しかし、幸か不幸か味をしめてカマ道一直線。現在は派遣でボールペンに芯を入れる仕事をしながら、日々同僚の苦学生に熱い視線を送る31歳。前科一犯。


【甘宮あまみ】

漫画家を目指してヘルスで働く女の子。日常の行動範囲はアパートとお店、本屋、画材屋、レンタルビデオ屋と狭く、疲れたときはネットを眺めるのが好きな準ひきこもり。漫画を描いてはいろんな賞に応募したり、出版社に持ち込みに行く積極性はある。お店年齢は21歳。